SETTING





 ここに書かれている設定は公式設定を基に想像と妄想で肉付けしていったものであり、それ以外にもオリジナルの項目もあるので、結果的には妄想の産物の宝庫となっています。
 それぞれの文内に出てくる語が既に項目立てされているときは青文字表示でリンクが貼られているので、オリキャラなど分からない語があってもそこから飛ぶことができます。

 基本的に、段によって『一般的な説明』『後世での論考』『私の見解』などに分類されています。ご参考までに。

 「思い付いたものを思い付いたときに」をモットーに書いていくので、進捗状況は完全に私の気分次第です。
 この設定を書くことが刺激になって私のモチベーションが上がり、小説執筆の助けになればとも思っています。つまり、ある種のストレス発散場ですので、悪しからず。



※注意※

 これより下の情報には、ゲームだけでなく掲載されている小説のネタバレも多分に含んでいますので、それを御承知の上でお読みください。




人物 土地 種族 秘技 魔法 召喚 剣技 竜技 奥義 物品 魔物 その他





人物


アデルバート・スタイナー

 アレクサンドリア王国軍プルート隊隊長。暗黒騎士。ヒュム。1766-。
 石匠スタイナー家の出身。

 5歳のときに飛空艇革命前の戦災に巻き込まれ戦災孤児になる。そのときにアレクサンドリア騎士に助けられた事を切欠に騎士を目指すようになり、技を伝える両親を失ったこともあり、石匠の家から同系であるスタイナー将軍家へ移って16歳で騎士になった。養子縁組はしておらず、育ての親は既に亡くなっている。
 23歳の頃に当時17歳だったベアトリクスに御前試合で勝利し、褒賞として過去に活躍した『プルート隊』の名を冠した男兵のみの隊を率いることとなる。しかし、ベアトリクスの実力がさらに伸びて彼女も女兵のみの隊であるベアトリクス隊を率いるようになると、意地の張り合いとも取れる競争が始まり、各々の隊長の実力差が影響してか、プルート隊は常に日陰の立場を強いられるようになってしまった。
 霧の大戦終結後は国内外を問わず同大戦におけるアデルバートの活躍が知られ、プルート隊への入隊希望者が続出して隊は拡張、アデルバートは本来の国兵隊であるアレクサンドリア軍の元帥すら凌ぐほどの影響力を有するまでになった。

 スタイナーは自らを王宮騎士と称しているにも関わらず「女王の身辺警護はベアトリクス隊の仕事」「王家自室の警備はベアトリクス隊の担当」などと言われていることからも、少なくとも最近は重宝されていな実情が窺える。だが明確な扱いの違いがありながらも、観劇の際はベアトリクスと並んでロイヤルシートに立っていたり演劇の開始の合図をスタイナーが出したりしている所を鑑みると、それなりの厚遇を受けているようでもある。

アレス・ジタン・オクティクス

 リンドブルム公国軍大尉。ビッグス隊所属。ヒュム。1783-。

 16歳で、シド9世直々に、欠員を埋めるため出兵直前の第四開拓団第二隊長に任命された。そのため士官学校を卒業どころか通ってすらいないにも関わらず、官位は少尉から始められた。
 17歳にリンドブルム公国に帰還して中尉に昇進。それと同時に大公直属部隊アレス隊の隊長となり、ロナルドとともにビッグス将軍の代理としてキングエディ平原東部・マキキビーチ・デレクビーチに駐在する。
 翌年、国際問題に発展しかけたトレノ連続強盗事件を解決した後、ビッグス将軍の帰還とともに大公直属部隊は解隊。大尉へ昇進するとともにビッグス隊へ配属される。

 シド大公の知人だが貴族ではなく一般人。しかし実力は箔付きで、開拓団の兵からも信頼を寄せられている。
 補佐官はワッツ・アウルヴァルト。彼曰く、アレスは「実力・気性ともに尊敬に値するが、勤務態度に難あり」とのこと。

 実は、ジタン・トライバルの仮の姿。

 上にヒュムと書いたが、これは「アレス・オクティクスはヒュムである」という認識が通っているためであり、実ではない。

エーコ・キャルオル

 召喚士、白魔道士。召喚士一族。1793-。
 伝説の存在とされている召喚士一族の生き残り。同じく伝説とされている召喚士の村マダイン・サリでモーグリたちと一緒に暮らしていた。

 1歳で両親を喪い、6歳で祖父を喪う。
 翌年、ジタン一行と出会い、祖父と「16歳になるまで村を出ない」という約束を破ることになってしまうことを心残りに思いながらも旅に出る決断をする。
 旅を終えた後、マダイン・サリに戻りはしたが頻繁に黒魔道士の村を訪れ、ビビが床に就いてからは黒魔道士の村で生活するようになった。
 ビビが亡くなった後、以前から打診されていた養子の申し出を承諾してリンドブルム大公家に入ったため、マダイン・サリに戻ることはさらに少なくなった。

 「村を出る」という言葉があるが、エーコはモグと一緒にコンデヤ・パタまで出かけている。そのため、この「村を出る」という意味は物理的なものではなく精神的な意味――つまり、独り立ちする――と受け取れる。それを理解していたからこそ、モリスンたちはエーコを快く送り出したのかもしれない。
 その事を考えると、エーコは弱冠6歳にして独り立ちを終えて故郷を出たことになる。

ガーネット・ティル・アレクサンドロス 17世

 アレクサンドリア王国第17代国主。召喚士、白魔道士。召喚士一族。1784-。
 ブラネプロリフィックの一人娘ガーネットとして育てられてきたが、実は、伝説とされている召喚士の村マダイン・サリから命辛々漂流してきた召喚士一族の娘セーラである。

 6歳のときに故郷マダイン・サリが急襲を受けるなか母とともに命辛々脱出し、アレクサンドリアに漂着したところをトットに発見されると、前日に亡くなったガーネットに生き写しだったために召喚士一族特有の角を折られてガーネットとして育てられ、保護された翌年からはトットの下で一国の王女としての教育を施される。この事を知る者は非常に少なく、ガーネット(セーラ)本人も霧の大戦中に記憶を取り戻すまで知らなかった。実の母親は漂流中に亡くなっている。
 16歳になり、数年前から様子がおかしい母ブラネを思い、シド大公に助力を願うために出国を決心してダガーと名乗り身分を偽って旅を始め、一国の君主としても一人の女性としても霧の大戦の渦中に身を投ずる結果となる。
 大戦終結後に即位式を行い、改めて正式にアレクサンドリア女王となった。
 戦勝国であるが、リンドブルムには金銭面、ブルメシアには労働力を以て他国の賠償に尽力している。

 王国始まって以来の美姫と謳われるほどの容貌と、容貌に劣らず美しい心を持ち、大戦中に母を亡くして(正式な即位式は行っていないものの、実質的な)女王即位の後も国民から慕われている。しかし、母である先代女王ブラネによる侵略の影響もあって、他国からの風当たりは決して弱くない。

クイナ・クゥエン

 アレクサンドリア王国アレクサンドリア城付料理長。ク族。年齢不詳(1710?-)。
 クエールの弟子。

 霧の大陸にあるク族の沼に住みクエール師匠の下で生活を送り、クエールの言葉に従ってアレクサンドリア城のコックを務めたりリンドブルム狩猟祭に参加したりしていたが食の道を全うできず、食の探求のために折よく沼を訪れたジタン一行に付いて行くことを決心する。
 霧の大戦終結後は、クエールに顔を見せるとすぐにアレクサンドリア城へ出向き、コック長として日々を送っている。

 どうやらク族は名前と独自の見解に関連性があるらしい。ではクイナの食に対する見解とは何かと考えた。「食いな」とは人に食を勧める言葉と考えられることから、「食の素晴らしさを人に教える」ことではないかと思われる。
 世界各地に散らばりながら、一族のため、似たような環境に似たような住処を作っていることから、ク族は持ち前の好奇心や行動力に反して閉鎖的な社会を築くことが窺える。そんな一族の中で、クイナのこの考えは非常に革新的なのではないだろうか。

グリフォン

 赤魔道士。ヒュム。1753-1786。
 1785年にアレクサンドリア国内で起こった連続殺人事件の犯人。その残虐な犯行と常人には計り知れない哲学、また病気で右目が醜く盛り上がっている容姿のせいで、しばしば『狂人グリフォン』と呼ばれる。

 老若男女問わず惨殺していた彼は、ショートソードとロングソードの併用による独特の刀剣術と秀でた赤魔法、多少の手傷はものともせずに攻撃を繰り出す戦法によって数々のアレクサンドリア兵や民間人を手にかけた。
 32歳でベアトリクスと刃を交え、彼女の右目に傷を負わせるも敗北。彼女の手によって逮捕された。
 投獄後、魔力を封じられていたにも関わらず彼自身の魔力・生命力の全てを結晶化したアイテムを生み出し、1786年に33歳で獄死した。

 グリフォンは、トレノオークションで落とせる『グリフォンハート』の解説にある「もっとも恐ろしきは、その不敵なる魂である」というベアトリクスの言葉から想像を膨らませた人物です。

サラマンダー・コーラル

 エバーラング族。1773-。
 ダゲレオ・コーラルの子孫。ミンウ・コーラルの従兄。

 物心付いた頃から既に親や家族は無く、生きるか死ぬかの厳しい環境を独りで生き抜いてきた。そのため相手が自分の利益となる者か否かという事にしか興味は無く、勝者は生き延び敗者は死ぬという原理を絶対と思っていた。その信念に忠実に生きた結果、18歳の若さで裏社会では凄腕のルーキーとして頭角を現す。
 しかしジタンとの邂逅により彼の信念は大きく揺るがされる。24歳の用心棒として燻っていた時期に窃盗直後のジタンと会うが戦うことなく逃げられたうえに汚名を着せられ賞金首となり、26歳のときアレクサンドリア女王に依頼された仕事の中では刃を交えた末にジタンに敗北する。そのとき敗者に死を与えなかったジタンに疑問を抱いたサラマンダーはジタンの助言に従って旅に同行。途中、考えが合わないジタンたちと行動を別にするが、負傷して身動きが取れなくなったところを単身で助けに来たジタンに心動かされ、それまでの自分の信念に疑問を抱いた。そして、さらなる旅の動向を承諾し、本格的に大戦の渦中に身を投じることとなる。
 霧の大戦終結後はガーネットの計らいで数年前から懸っていた門違いの指名手配も解け、新生黒魔道士の研究をするミコトに力を貸していた。その他にも、ジタンの存在に逸早く気付き開拓団の下に駆け付けてウイユヴェールの隠蔽に協力したり、ビビJr.に会いに行ったり、ガーネットやフライヤたちに新しい情報を渡したりと、忙しなく世界を駆けながら多くの人に協力し、以前からは考えられないような生活を送る。
 そのような生活の中、従妹であるミンウ・コーラルと出会い、自らの出自を知る。
 自らの出自を知った後は、ドクトル・コーラルの研究を中心に多くの分野の研究書に目を通して、より一層、仲間の知恵袋としての役割を果たすようになる。

 サラマンダーは非常に哲学的な人間だと思われる。
 それは感情的になって真実を見失うことが死に直結する世界を生きてきたからという事もあるだろうが、彼は非情に憤ることも惨事を嘆くことも己の無知を認めないこともせず、常に冷静だ。そして彼は良い意味でも悪い意味でも素直だ。嫌なものは嫌だと言うし、理解できない物事に直面しても拒絶したり逃避したりせずに理解や解決を求める。ひいては知的探求心も相当なものであろう。
 そのため、私が描くサラマンダーは暇な時間を鍛錬と調査に当てている。

ジタン・トライバル

 ジェノム、星と語る者。1783-。

 4歳の頃にタンタラスの頭領バクーに拾われ、彼の下で育つ流れでタンタラスに入団する。
 拾われる以前の記憶が無く、13歳の頃に故郷を求めて放浪する。フライヤと同道して友好を深めるなどしながら2年ほど旅した後に故郷を見つけられぬままリンドブルムヘ戻るが、「いつか帰るところ」が何であるか理解するに至る。
 16歳のときに、タンタラス団によるガーネット王女誘拐作戦に携わり、団員たちとの見解の相違により退団した後もガーネットを無事にリンドブルムまで送り届けることを決意。霧の大戦に巻き込まれる。
 大戦終結直前にイーファの樹の暴走に巻き込まれて行方をくらますが、無事生還を果たし、アレス・オクティクスと偽名を名乗って地位を手に入れるために奔走する。

 身分こそ平民であるものの、歴史の行間に埋没された彼の英雄的な行動がなければ霧の大戦終結はあり得なかっただろう。
 後にストラト卿の綴ったサーガ『英雄物語』となって小説や劇を通して語り継がれる中で彼が英雄であり続けることができたのは、ひとえに、彼の行動原理が大多数に対する無償の愛ではなく、自らのためと言っても過言ではないほどに小規模で親密な情愛に基くものだったからだろう。

 『星と語る者』と上に記されているが、これは『ジェノム=星と語る者』ではなく、ジタンがジェノムの中でも特殊な『星と語る者』であるということだ。詳しくは【その他:星と語る者】を参照のこと。

シド・ファブール(シド1世)

 リンドブルム王国初代国主。ヒュム。1292-1380。

 リンドブルム高原に住む狩猟民族のうちファブール部族の頭領の息子だったが16歳で故郷を出て、旅の途中で出会ったエイヴォンとともに世界中を旅した。
 36歳でリンドブルム高原に王国を建国。高原内に自治区を設けたうえで外敵から護ることを誓約し、先住民マトーヤ族を国民として引き入れた。これは、マトーヤが持つ独特の魔術を自分たちのために利用するためでもあり敵勢力に渡って利用させないためでもあった。
 37歳、狩猟の伝統を残すためにリンドブルム教会を建設。
 61歳で無二の親友エイヴォンを喪い、意気消沈。息子に王位を譲った。
 その後は体力の限りを旅に費やし、晩年は孫との語らいで日々を送ったという。
 彼はマトーヤ族との誓約を守り続け、幾度か起こった他民族間との抗争でもマトーヤを後ろ盾としながらも彼らを護り続けた。幸か不幸か、息子マウの手によりマトーヤ族が壊滅の危機に瀕することになるのは、彼の没後のことである。

 シド1世の紀行文と、旅の間にシド1世が描いた地図を元に当時の地理学者の粋を集めて作製された世界地図は、ともにリンドブルム公国の国宝である。

シド・ファブール(シド2世)

 リンドブルム王国第3代国主。リンドブルム公国初代大公。ヒュム。1373-1455。

 『父殺し』という異名を持つ。たいへん物騒な異名だが、それは乱心してマトーヤ一族を虐殺した父王マウを止めるためであり、当時の国民たちも後世の者たちも英断であったと述べている。

 潔癖とまではいかないものの、シドは不義を嫌う人だった。それは『父殺し』のエピソードからも察せられることだが、その後の行動にも表れている。
 マウを殺した後、シドは即位から1年を待たずにリンドブルム王国を公国へと変え、国主の権威を他の貴族や将軍に分散させた。その上で自らを初代大公シド2世だと名乗った。霧の大陸では家同士の派閥争いが多かったため、通例では家の当主たちは代々の繋がりを表す「世」を姓に付けるものであるが、シドは名に付けた。それは同名の祖父に尊敬の念を示すとともに父王と自分との繋がりを否定する気持ちの表れであったという。それほどに、シドはマウの所業を嫌い憎んだのだ。

 上記の国政の大転換は大きな混乱を呼んだ。しかし、その混乱をシドは急速に収めて新たな秩序の流れに乗せることに成功した。この事からも分かる通り彼は凄まじい手腕の持ち主で、それはシド1世の教育によるところが大きいと自他ともに認めている。
 シドは後代の大公のために祖父から教えられた事を手ずから著している。これは永く保存され、大公やそれに連なる者たちの教育に使われ続けている。

マウ・ファブール2世

スタイナー
ストラト卿

 晴霧時代初期に登場した劇作家。エイヴォン卿の子孫。
 霧の大戦で活躍した晴霧の英雄たちをモデルとした『英雄物語』でデビューし、社会現象と言えるほど絶大な人気を博した。

セーラ

 召喚士一族。1784-。

 故郷マダイン・サリを急襲され、6歳で母ジェーンとともに脱出する。その後、アレクサンドリアに流れ着くが漂流中に母を喪い、前日に亡くなったガーネット王女に生き写しだったために彼女の身代わりとして育てられ、その際に王の命によって角を失った。

ダガー

 ガーネットの偽名。
 霧の大戦中に旅をするにあたって本名を名乗ることに障害を感じたガーネットは、名を偽ることを決心した。共に旅した仲間の中にはダガーとして出逢った者も多く、旅の仲間は皆、旅を終えた後も公事の場でないときは親しみを込めてダガーと呼ぶ。

 正体は王女(後に女王)であるが、ダガーと名乗っている間は町娘たちと変わらない口調・態度で過ごしていた。大戦終結後も時折ダガーと名乗って市井に降り、大々的に行われた即位式を皮切りに女王の顔を認識した国民たちも、ダガーの正体に気付いても知らぬふりをしてくれていたという。
 アレクサンドロス17世の治世は慈悲と親愛に溢れていると謳われているが、その治世に至るにはダガーとして過ごした時間が大きな影響を与えたと思われる。

 その名の由来には「城から出るときに唯一持ち出した武器だった」「たまたま目に入った」などと諸説あるが、最も有力だと言われるのがストラト卿著『英雄物語』に書かれている「ジタンに護り刀として渡されたのがダガーだった」という説である。

ビビJr.

 八英雄ビビの6人の子の総称。
 それぞれ、レオ・ライブル、カルノ・カルニス、ニーシェ・ザグリア、ピッセ・ザウトル、ライザ・ラスクール、ローフィ・ジプキー。
 ビビとの血の繋がりはなく上記の通り姓も統一されていないが、彼らは自分たちを兄弟だと言い、世界各地に散りながらも交流は絶えなかったという。

 この項はいらないかとも思ったけれど、一応FF9プレイヤーとしては馴染みのある単語だろうと思い載せました。

ビビ・オルニティア

 黒魔道士。?-1800。
 クワンの保護の下、トレノの東にある洞で生活していた。クワンの教育により、実年齢は1歳程度にもかかわらず博識である。

 クワンの死後、出先のトレノにおいてアレクサンドリア城で公演される演劇のチケットを手に入れたがチケットが偽物であったため入城できず、無断で観劇しようとしたところを城兵に見つかってしまい劇場艇に逃げ込んだ。それにより霧の大戦に巻き込まれていく。
 身体能力は並かそれ以下だが、内に秘める魔力と黒魔法の技術において右に出る者はおらず、旅において大きな力となった。それだけでなく、彼の眩しいほどの純粋さや臆病ともとれる優しさ、他者すら勇気付ける強さは仲間に大きな影響を与えた。
 大戦中に自らが戦争の道具として作られた存在であることを知り衝撃を受けるが、それを乗り越えて自らと同じ立場の者がそれ以上増えないようにと仲間と共に黒魔道士兵の原材料である霧の発生を止めた。
 大戦終結後は黒魔道士の村に居を構え、同じく黒魔道士の村に住んでいるミコトに新生黒魔道士の製造を依頼した。その後誕生した6人の新生黒魔道士の父親になり、寿命が絶えるまで子どもたちを導くことに尽力した。

 後の世にも細々と伝わっている魔法剣という剣技は、それまで実践は不可能とされていたものを彼とアレクサンドリア王国軍プルート隊隊長アデルバートによって実戦的に実現されたものである。
 様々な書物を紐解くと、ビビに対するアデルバートの敬仰の念が端々に窺える。その中でも、アデルバートがビビをパートナーとしない限り魔法剣を使わなかったことは有名な話で、彼亡き後、どれだけ優秀な黒魔道士が近くにいようともアデルバートは決して魔法剣を使おうとしなかったという。この話はアデルバートの頑なとも言えるほどに誠実な騎士道を称えるとともに、なにより、アデルバートにそのような敬意を向けられるほど、ビビが俊傑であったことの証左でもある。

フライヤ・クレセント

 竜騎士。ネズミ族(ブルメシアン)。1778-。

 傍系であるものの王家の血が流れている高貴な出だが、フラットレイに憧れて修行の末に16歳にして竜騎士となる。その後、フラットレイと恋仲になり充実した生活を送るもフラットレイは修練の旅に出てしまい、予告していた時期を過ぎても帰らない恋人を探しに、王の許しを得ないままブルメシアを出た。
 恋人を探す旅の途中でジタンと出会い、しばらくの間、行動を共にする。
 道を別にしてから2年後にリンドブルム狩猟祭でジタンと再会。その直後、ブルメシアの援軍要請を聞いてジタンたちと共にブルメシアへ赴き、霧の大戦に巻き込まれていく。
 旅の途中で恋人フラットレイと5年越しの再会を果たすが、彼は一切の記憶を失っており、喜びの再会とはいかなかった。しかし深い悲しみを抱えながらも旅を続け、大戦終結後はブルメシアに帰国してフラットレイと共に故国の復興活動に従事する。

 ストラト卿著『英雄物語』の中でも、彼女の悲しい恋物語は描かれている。
 その、騎士として勇ましく生きながらも女の心を忘れないフライヤの姿勢は同じように武器を持つ女性たちの憧れの的で、ブルメシアンでない種族でも彼女を理想とする者は多い。
 また、居合わせた者たちで構成される即席の仲間の中で、彼女とジタンだけは過去に旅を共にした経験があった。2人は友として対等な立場にありながらも互いに一目を置き、甘えを見せることなく支え合い、他の仲間とは違った絆を結んでいる。そんな2人の性別と種族を超えた友情は後世の者たちの目には理想の形として映り、『ジタンとフライヤ』という言葉が無二の友情の代名詞となっている。

 彼女の古風な口調は他のキャラクターとは一線を画す。それに彼女の服の前垂れの左下には百合の紋(フランスでは王家の証)が描かれている。
 なおかつ、フライヤは竜騎士になってから3年も経たない新人の内に王の許可無くブルメシアを出ているはずなのにクレイラでの邂逅ではブルメシア王やパックと親しげな様子で、そのうえ王に対して「(パックは)相変わらずの腕白ぶりでした」と言っている。実力があったとしても、ただの新人竜騎士はそんなこと言っていい立場じゃない。
 それらを踏まえ、フライヤはそれなりの特権階級の人間なのだろうと推察した。

ブラネ・ラザ・アレクサンドロス16世

 アレクサンドリア王国第16代国主。ヒュム。1760-1800。
 プロリフィックの妻で、ガーネットの母。セーラの継母。

 1760年、アレクサンドリア王国首都アレクサンドリアに生まれる。父はアレクサンドリア軍元帥、母はアレクサンドリア第14代国主。
 ブラネが10歳のとき、第31次アレクサンドリア戦役中に前線で指揮をとっていた父がブルメシアの攻撃によって亡くなる。母は夫の訃報に倒れ、自ら執政能力を失ったとして弟(ブラネの叔父)に譲位した。
 16歳の誕生日に叔父プロリフィックと結婚し、王位を譲り受ける。
 23歳のとき、長く患っていた母が亡くなる。
 29歳、夫直属の私兵隊としてプルート隊を編隊し、御前試合でベアトリクスに勝利したアデルバートを隊長に据える。
 翌年、ガーネットが病死。その死を受け入れられず寝込んでいたところに、翌日、ガーネットに生写しの少女セーラが保護されたため娘として育て始める。同年の暮れ、症例の少ない難病にかかり容貌が一変してしまう。
 34歳、7年間の闘病生活を公私ともに支えるも、夫を喪う。
 38歳1月、キング家の使者として謁見に来たクジャから話を持ちかけられて戦争を企み始める。翌月、クジャを危険視して諫言してきたトットを解任し、本格的にクジャから召喚獣の知識や黒魔道士兵製造法を教わる。さらに翌月、ダリにて黒魔道士兵製造工場の建設を開始。キング家が前もって手を打っていたこともあって5ヶ月後には工場が完成し、テスト生産を始める。
 39歳10月、黒魔道士兵の量産を開始。1月、『黒のワルツ』と呼ばれる特殊黒魔道士兵3体を、誘拐されたガーネット奪還のために計画段階から実地に移す。その後、次々と戦場に黒魔道士兵を投入し始める。時を同じくして、城に帰ってきたガーネットから召喚獣を抽出し、召喚獣も戦場に投入。
 同年2月、外側の大陸近海にて黒魔道士・召喚獣を使ってクジャへ攻撃を仕掛けるが、返り討ちにあう。辛くも即死は免れ沿岸にて必死の治療が施されるが、死亡。最期を看取ったガーネットの手によって故郷へ帰り、数日後、密かに王墓へ埋葬された。

 彼女の晩年の凶行の原因については、時代を問わず様々な憶測が飛び交っている。
 ひとつには、彼女の凶行が始まる少し前に城に出入りしていた武器商人が、何らかの洗脳行為を施したという見解がある。これは、件の武器商人が霧の大戦に大きく関わった黒魔道士兵の製造法を授けた事実を考えても、根も葉もない想像とはいえない。
 ひとつには、彼女自身の心の問題だったという見解がある。彼女の生涯には病難が付きまとっていた。尊敬していた母を病で亡くし、幼い愛娘ガーネットが熱病に倒れて記憶を失くし、自分もまた奇病にかかり醜い容貌となってしまい、戦死した父の代わりに叔父としても夫としても支えてくれたプロリフィックもまた病で亡くしたのだ。その波乱の中で武力を手に入れ、父の仇であるブルメシアと夫の病原となった――と、ブラネは信じていた――リンドブルムに刃を向けてしまったのではないかという見解だ。
 他にも説はあるが、どちらにしろ眼前に差し出された黒魔道士兵と召喚獣の誘惑を退けられず、あまつさえ宣戦布告なしに友好国に攻撃を加えるのは君主として正しいとは言い難い道であったことは事実だ。

 その一方でブラネは人格者としても有名で、自国の民から慕われていた。
 彼女は夫ほど美しかったわけではなかったが、見目麗しい女性だった。けれど奇病により醜い容貌となり、症状が治まっても最初の数日間は部屋を出ることなく政務も疎かになっていたそうだ。しかし、夫の励ましを受けて気持を切り替えてからは以前と全く変わらない生活を送った。その際、アレクサンドリア一の写実画家を呼んで自らの容姿を克明に表現させると、城の客なら必ず通るホールに飾らせたという。
 また、ブラネは自らが病と向き合う機会が多かったため国の医療体制の向上に尽力した。結果、アレクサンドリア国の医療体制は他国に比べて格段に手厚くなった。特に子供を対象とした医療に特化しており、一定の年齢に達しないアレクサンドリア国籍の幼児に関しては医療費全額免除となっている。

血の覚醒

プロリフィック・ウィザ・アレクサンドロス15世

 アレクサンドリア王国第15代国王。ヒュム。1745-1794。
 ブラネの叔父にして夫。ガーネットの父。

 第31次アレクサンドリア戦役中に伴侶を亡くし倒れた姉に代わってアレクサンドリア王となり、戦争終結に当たる。在位中は外交に努め、リンドブルムとの国交を開始。公私ともに大公一家と親交を深めた。
 31歳で16歳のブラネと結婚して王位を譲り、外務に従事する。プロリフィックの在位期間は6年に満たず、歴代君主の中でもフローラ・ドラウト・アレクサンドロス6世に次ぐ短さである。
 35歳のとき、病に倒れた親友シド8世を見舞い、同じく親友であるシド9世の即位を見守る。
 42歳のとき、7年の闘病生活の末に亡くなったシド8世を見送った数ヶ月後に同じ病に罹る。
 44歳の御前試合でベアトリクスに勝利したアデルバートをプロリフィック専属私兵隊プルート隊の隊長に任じる。
 翌年、娘ガーネットを亡くすが翌日にガーネットに生き写しの少女セーラを保護し、セーラをガーネットとして育てる決心をする。
 47歳になると、シド9世と共にアレクサンドリア・リンドブルムの友好の証として南ゲートの建設を開始。
 49歳で、奇しくも親友シド8世と同じく7年間の闘病生活の末、南ゲートの完成を見届けないままに生涯を終える。カリスマ性には欠けるものの穏和で優しい気性をしていた彼の訃報に、国内外の多くの者が涙したという。

 ブラネとの夫婦仲はとても良く、聡明ながらにヒステリックな面があるブラネを穏和で経験豊富なプロリフィックが支えている様は美しかったと、当時を知る国民は口を揃える。
 ブラネが個人的に所有している飛空艇レッドローズは、プロリフィックがシド8世に製造を依頼し、結婚の記念にブラネへ贈ったものであることは有名な話である。

ベアトリクス

 聖騎士ヒュム。1772-。

 元アレクサンドリア王国軍ベアトリクス隊隊長。
 幼い頃から秀でた剣の腕を持っていて周囲から『マデリーンの再来』と騒がれたほどの実力者であり、実際、兵役に就いた初年に世間を騒がせた凶悪犯の逮捕に貢献していた。

 13歳の若さで、当時アレクサンドリア国内で起きた連続殺人事件の犯人『狂人グリフォン』を逮捕する。しかし、その戦闘時にグリフォンの攻撃によって右目を負傷し、失明。しばらく兵役から遠ざかることとなる。
 軍役復帰すると、グリフォン逮捕の功を認められて、15歳でありながら特例として御前試合に出場するようになる。
 16歳のときに御前試合において熟練者を倒して実力を認められ、隊を任せられる。その後もベアトリクスは数々の熟練者たちに勝ち続けるが、17歳でアデルバートに負ける。
 18歳のときに地方で起きた紛争を鎮圧し、その功として女王からセイブザクイーンを授けられたうえで自分の名前を冠したベアトリクス隊を与えられる。
 霧の大戦終結後、28歳で、罪を償うために将軍職を辞してブルメシア・クレイラ復興支援の労働力として赴く。そのとき、女王にセイブザクイーンを返還した。ベアトリクスと彼女に続いた女兵の退役はアレクサンドリア王国の軍事面に看過できない影響を与えたが、霧の大戦中に前線に立って攻撃の指揮を執っていたベアトリクスをそのままにしておくことはアレクサンドリア王国にとっても得策ではなかった。
 しかし退役から約二年後、ブルメシア王の取り計らいで彼女たちは労役を解かれ、ブルメシアとアレクサンドリアの特別の恩赦によりアレクサンドリアへの帰国を果たす。しかし、解隊されたベアトリクス隊は終ぞ再編成されることはなかった。

 ブルメシア・クレイラ復興活動従事の前後で彼女の戦闘スタイルは大きく変化している。
 それまでは正眼の構えを基本とし攻撃時には剣先を定めずに相手の懐近くに滑り込んで一撃を与えるというものだったのだが、ある時を境に剣と特殊短槍の両手使いに変わり、フォームも足さばきを定めずに剣・槍の長さの違いでトリッキーな攻撃を繰り出すというものに変化した。ふたつに共通するのは、自身の身軽さを最大限に発揮する型であり幻惑的なものであるということである。
 ブルメシア王の恩赦によって帰国を果たした後、彼女の腕に対する評価は墜ちるどころか磨きがかかり、多くの活躍とともに特有の型を後に伝えた。
 一説に、彼女の両刀使いのフォームは、その右目を奪った狂人グリフォンのフォームを参考にしたものであるといわれている。

マウ・ファブール

 リンドブルム王国第2代国主。ヒュム。1337-1389。

 戦を好む王で、自らが前線に立つことにこだわる王でもあった。
 第9次リンドブルム戦役においてアレクサンドリア軍のマデリーンに敗れ、傷を抱えたまま敗走を余儀なくされる。
 その戦役の直前にはリンドブルム王国内の一部の自治を許されているマトーヤ族に応援を請うていたのだが、マトーヤは戦争そのものの回避に尽力するよう説くばかりで参戦を断っていた。そういう背景があったため敗北は協力に応じなかったマトーヤのせいだと逆恨みしたマウは敗走の末にマトーヤ自治区を急襲し、マトーヤ一族を壊滅させた。
 その直後、急襲の一報を聞きつけた息子によりマトーヤの地で殺される。
 彼はリンドブルム史の中でも暗君として有名であるがマトーヤ族虐殺以外の悪行は記録されておらず、凡庸ではあっても悪政を施すようなことはなかった。それどころか、幾度か王国の危機を救ってすらいる。それでも悪い印象が付きまとってしまうのは、マトーヤ急襲があまりにも卑劣で残虐の限りを尽くした事件だったからだろう。

 彼をそこまで狂わせたものは何だったのか、ということはリンドブルムの学者や作家には興味深い題である。過ぎた話であるため何とでも言いようがあるし真実は謎のままではあるが、彼を狂わせたのは彼のと息子にあるのではないかと言われている。
 彼の父シド1世は国政に人生を懸けた男であり、無二の親友を亡くして意気消沈した後はマウに王位を譲ると晩年まで世界中を旅して息子を顧みることはなく、いざ帰郷しても幼いシド2世を手塩にかけて教育するばかりでマウを気にかけるようなことはなかったという。それは息子への全幅の信頼があるからこその態度だったのかもしれないが、マウは父親の愛に飢えていたのではないだろうか。
 また、息子であるシド2世は手ずからの教育の賜物かシド1世の信念を色濃く受け継ぎ、容姿も父よりも祖父に似ていたことは現存する人物画からも窺える。マウにとっては名君と名高いシド1世の後を継ぐだけでも重圧であったろうに、父の死後になっても父の面影を強く残す息子が頭角を現してきて名君の再来と謳われる状況の辛さは想像に難くない。
 マウの悲劇は彼の本性ではなく、名君から生まれ名君を生んだ環境にあるといわれる。また、下剋上が染みついた狩猟民族の気質が抜け切れていない国であったという環境も原因の一つだっただろう。
 もしも彼が違った時代に生まれ落ちたならば暗君となることはなかったかもしれない――その思いを抱く者は当時もいたのだろう。マウ・ファブールを題材とした論文や小説は、長い時を経てもなお静かに語り伝えられている。
 マウの没後400年近く経った1786年、マトーヤ族の最後の生き残りであるヒルダガルデがシド9世の元に輿入れして無人になって以降、マトーヤ自治区はリンドブルム公国直轄地となり第二辺境警備隊の管理下に置かれた。その頃から、マトーヤ自治区跡地で老人の幽霊が出るという話が広まった。マウはもともと生気に満ち若々しい容姿であったという記録があり没年も52歳だったので老人と呼べるような容貌ではなかったと思われるのだが、この幽霊はマトーヤの地で息子に殺されたマウの怨念が霊となったものだというのが専らの噂だ。ちなみに、この幽霊の目撃談は1800年を境に激減し、数年後には何事もなかったかのように噂は囁かれなくなっていた。


ロナルド・フォード

 リンドブルム公国軍大尉。ジェシー隊所属。ヒュム。1782-。
 フォード家当主。

 デュライ塾を首席で卒業し、塾長の推薦の下、12歳で文官となる。
 1800年のアレクサンドリアによるリンドブルム襲撃時のアトモス召喚によって父を亡くし、母は夫を亡くした悲しみにより病に倒れる。直後、17歳で家督を継ぎフォード家当主となるが、開拓団への参加が決定したため責務の一切を叔父に一任した。
 18歳でリンドブルム公国に帰還して中尉に昇進。それと同時に大公直属部隊ロナルド隊の隊長となり、アレスとともにビッグス将軍の代理としてキングエディ平原東部・マキキビーチ・デレクビーチに駐在する。
 翌年、国際問題に発展しかけたトレノ連続強盗事件を解決した後、ビッグス将軍の帰還とともに大公直属部隊は解隊。大尉へ昇進するとともにジェシー隊へ配属される。

 補佐官はニーダ・スティアラー。


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土地

南洋群島

 エバーラング諸島・ラナール諸島・セイクロブレス島・サルベージュ諸島の総称。

 気候は温暖にして湿潤。種々の作物や海産物が取れるが、それに比例して凶暴な魔物が多いため、戦う術を持たない者には到底生活できない環境である。
 しかし、エバーラング諸島にはエバーラング族が住み、ラナール本島にはク族が住み、セイクロブレス島にはヒュムが小さいながらも集落を築いている。これは、エバーラング族やク族には相応の戦闘能力があり、セイクロブレス島民はダゲレオ山から湧く聖水の恩恵を与かっているからである。
 エバーラング諸島では屋根を草で覆った半地下の住居が、ク族の沼では自生する植物と同色の住居が、セイクロブレス島では森林の中で聖水の堀をめぐらせた石造家屋が主であり、これらは飛行系の魔物に見つかりにくい、もしくは襲撃を受けにくい造りとなっている。他の島に定住している者はいないが、他の島民の移動や漁獲の拠点として使われている家はある。

 地理学上では忘れ去られた大陸のうちに分類される。


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種族


 ここで述べる種族は、生物学的な見地および民俗学的な見地からのものであり、たとえ生物学的に違う種族であろうとも共通の帰属意識の下で構成される種族であれば取り上げている。

エバーラング族

 古くからエバーラング諸島に住む一族。『語部の民』とも呼ばれる。
 その歴史は統一王国以前まで遡り、ヒュムドワーフ・モグラ・ルフェインと並ぶ歴史を持ち、ネズミ族に次ぎドワーフに並ぶ勢力を誇る。
 彼らの大きな特徴は青白い肌・焔色の髪・並々ならぬ身体能力であり、思索に耽ることを良しとする者が多いのもまた特徴の一つとも言える。
 かつて、水脈の祠にまつわる信仰があった。

 彼らの生活は精神と肉体の鍛錬に費やされ、技の向上や組手、思索や討論に日々を送る。その日々の中で生み出されたのが奥義である。
 凶暴な魔物が多い南洋群島を生き抜き確たる発展を遂げられたのは、この民族性が群島の環境に合ったからと言え、また、他の地域への進出が見られないのは群島以外に民族性に合う環境が少ないからとも言える。

 最も有名なのは八英雄サラマンダー。学者などの知識人ならば、ドクトル・コーラルことダゲレオ・コーラルを知っている者も多いことだろう。

ドワーフ

 古くからドナ大山の山間に住む一族。
 その歴史は統一王国以前まで遡り、ヒュムエバーラング・モグラ・ルフェインと並ぶ歴史を持ち、ネズミ族に次ぎエバーラングに並ぶ勢力を誇る。
 モーグリほどではないものの、二足歩行できる種族の中では身長が低い。これは全体に小柄なわけではなくて胴と足が短いためであり、腕の長さや顔の大きさ、大まかな容貌などはヒュムたちと似ている部分も多い。それどころかヒュムに比べて足の裏は固く広く丈夫で、顎は大きく発達しており、四肢の指は器用に動く。肌の色は緑色である。
 かつて、地脈の祠にまつわる信仰があった。

 現在の信仰の対象は地・水・火・樹であり、この四つは四大の祠にも通じる部分が大きい。風が樹に取って代わってしまったのは、風を信仰するルフェイン族との交流が少なかったためと、地脈の祠から離れた際にイーファの樹を発見し、これを聖域と定めたことが大きく関係しているのだろうと思われる。また彼らは鳥を神の依代と見ており、鳥が降り立つ場所として樹の重要性が大きくなったとも考えられる。
 住居は、崖や樹の隙間を岩や石で固めた簡素で堅牢なものであり、常に自然を感じられるようにと採光用の隙間が多く設けられている。また、出入口を遮る板や布は存在せず、外と内・公共と私宅・ハレとケなど特別な区切りを設けたいところにはカスガイ型の門が設けられ、これらの多くには神の加護があるようにと願いを込めて鳥をモチーフにした梁が使われるか、梁の上に鳥の置物が置かれる。

 ドワーフに伝わる伝承の中に、ボボと呼ばれる鳥が多く登場する。これが種類を指すのか固有名詞なのかは不明だが、このボボという鳥は安産・多産・子孫繁栄・豊穣の象徴であり、山間――ひいてはコンデヤ・パタ――と女性を護る存在とされている。そのため、ドワーフの中で『鳥宿り』という職名を冠する者は代々神主の補佐を務め、必ず女性が就く役目と決まっている。
 また一説には、霧の大陸南部に伝わるアウガ神話はドワーフの伝承を起源としており、神話の中に出てくるボボー鳥はボボがモデルとなっているのだという。

 「天(太陽)の素晴らしき理があまねく我らの上に体現される」という意味の「ラリホ」という言葉を神聖な挨拶としており、この言葉を言わない限りドワーフの集落に立ち入ることはできない。

民族考察『ドワーフ』

ネズミ族

 クレイランとブルメシアンの総称。ヒュムに次ぐ勢力を誇る。
 元を辿ればルフェイン族であるが、生活の場を霧の大陸に移したのは統一王国末期にも遡るため、随所にルフェインの名残があるものの、その背景にある歴史を知る者は少なくなってきている。
 ルフェイン族と違い、青灰色の体毛を持つ。

ヒュム

 ヒトとも呼ばれる。
 その歴史は統一王国以前まで遡り、ドワーフエバーラング・モグラ・ルフェインと並ぶ歴史を持ち、ガイアで最も多い種族である。

 他種族に比べて五感が未熟だが、長い手足と発達した指を有しており細かい作業に長けている。需要の多い優良な発明品はヒュムによって作られたものが多い。
 また柔軟性と多面性を有し頭の回転も速く社交性に富むためか、有史にある多種族を擁する国家の元首には9割以上の確率でヒュムが就いている。

 私の中で『ヒュム』や『ヒト』は種族に関するもの表記であり、『人』や『人間』は「人が良い」とか「人の目を気にする」とかで使うように精神的・観念的なものだと捉えている。
 ブルメシアでビビは「ボクは……ボクがどんな人間なのかを知りたいんだ。もしかしたら……人間じゃないのかもしれないけれど……」と言っていた。――ビビはたしかにヒトではなかった。けれどとても気高く立派な人間だったと、そう思う。

ルフェイン族

 古くからブロウバレー南部の岬や島に住む一族。
 その歴史は統一王国以前まで遡り、ヒュムドワーフエバーラング・モグラと並ぶ歴史を持ち、エバーラングに次ぐ勢力を誇る。
 ネズミに似た容貌と、他民族とは比べようもない跳躍力が大きな特徴である。
 かつてより風脈の祠にまつわる信仰があり、ウイユヴェールとともに聖地としている。

 忘れ去られた大陸は崖岸に囲まれた大陸で、船による上陸はほぼ不可能であるため不便ではあるが、それらは海洋の魔物を防ぐ大きな手段にもなる。その環境を破壊することなく適応することに努めた彼らは長い歴史の中でもその跳躍力を失うことなく、さらなる鍛錬によって槍術や蹴り技を中心とする格闘術を磨きあげてきた。

 生物学上でも民族学上でもルフェイン族とクレイラン・ブルメシアンは別種族と見做され、後者はネズミ族と総称される。
 クレイランとブルメシアンは統一王国崩壊以前に霧の大陸に渡ったルフェイン族を祖先とするため、霧の大陸で新たに根付かせた風俗に合わせて、クレイランには風に対する信仰が、ブルメシアンには並外れた跳躍力が受け継がれていった。


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秘技


 盗賊が使う技。
 基本スキルにおいては、別段、盗賊でなければできないような技ではないので手先が器用で身のこなしが素早い者でも可能だが、高度な技になるにつれて特殊な技術や経験を要するものになっていく。

 統制がとれている盗賊団やそれに類する集団の使用する薬には癖があり、その癖とも言われる特色は各々の集団が経験を重ねることによって独自に開拓していったものである。
 それらは盗賊たちの生死に関わる重要な機密情報の1つでもあるため、そのような機密が他の盗賊集団に広がることは集団そのものの統合が行われない限りありえない。必然的に、盗賊たちは自らが所属する盗賊団特有の調合法や攻撃の型を受け継ぐことになるため、一般にこれらの技を『秘技』と呼ぶようになった。


 幾らかの金属片と特殊な油を敵に投げつけて専用の爆薬を使って小爆発を起こし、その隙に逃げる技。
 加熱・酸化によって魔物の嫌う匂いを発する油や、延焼しにくく発光や爆音が大きい火薬は体積も重量も大したものではないが、金属片は重く嵩張り長旅には向かない物であるうえに特殊な素材である必要はない。そのため金属片としてギルを使用する者が多い。

 有効な爆発規模は敵の強さや多さに比例するため、強く多くの敵から逃げる場合は油も火薬もギル(金属片)も多く消費してしまうことになり金欠中ならば躊躇することもあるだろうが、疲労や怪我や生存のリスクを考えれば安いものだろう。
 ただし、気が大きい魔物の中には効かないものもある。


 獣や魔物の匂いを放つ袋や魔物の鳴き声に似た音を出す鳴子を敵の背後に放り、敵の意識を転じさせる技。その隙に逃げてしまうのも良し、隊形を立て直すのも良し。
 ただし、匂い袋や鳴子の種類によっては魔物が逃げてしまう場合や、かえってさらに強い魔物を呼び寄せてしまう場合もあり、道具の選択や使用位置によって多様な効果が得られるので使用者の技術や判断能力が問われる技である。
 匂い袋や鳴子の管理にも気を使う必要がある。中には野営中に匂いを焚き続けたり歩行中に鳴子を鳴らし続けることで危険を回避する場合もあるが、匂いや音が漏れないようにするのが基本であり、使用者は管理において細心の注意を払わなければならない。

 ヴァイスやニンフなど人に近い魔物や知能の高い魔物の中には人の言動を理解する能力を有するものも多い。タンタラスの団員はそういった魔物の能力と自らの技能を利用した迫真の演技による騙し打ちを得意とする。

「おっさん、後ろを見ろ!」
「そのような手には騙されんぞ!」


 物理攻撃や盗みを行う際に敵の懐や表面に特製の爆薬を仕掛けていき、最後にそれらを一気に爆発させる技。
 『ぬすむ』や『ぶんどる』以上に精確な作業を敵に気付かれない内にやらなければならないため、かなりの実力と経験を必要とする。
 凄腕になると、敵との遭遇時に仕掛けを終えてしまい戦闘開始と同時に技を発動できてしまう者もいる。

 盗賊団タンタラスでは「これを修得したら団長になれる」とも言われる――しかしタンタラス団はバクーが結成したもので、この噂が広まったときはまだ代替わりを迎えていないので、眉唾物である――ほどの、非常に難易度が高い大技である。


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魔法

黒魔法

 魔法の原則通り、体内の魔力を魔脈に巡らせ身体の各所にある魔脈孔から放出することとイメージすることを基本とし、威力は魔力量に依存し、性質はイメージに依存する。
 また威力は環境にも依存し、極寒の地での炎系魔法や極暑の地での氷系魔法は威力が落ちる。ただし、このような地域に生息する魔物は反対属性が弱点なため、結果として威力は上がる。
 実力以上の魔法を使ったり武器防具無しで魔法を使うと、魔法の余波が押さえきれずに術者自身が負傷することがある。

 素質さえあれば種族・性別・年齢を問わず使えるが、オルニティアを戴く者たちは破格の実力を持つ傾向にある。





白魔法

 魔法の原則通り、体内の魔力を魔脈に巡らせ身体の各所にある魔脈孔から放出することとイメージすることを基本とし、威力は魔力量に依存し、性質はイメージに依存する。
 また威力は体調にも依存し、術者の魔脈が疲弊していたり対象者の気力が低かったりすると威力が落ちてしまう。
 実力以上の魔法を使ったり武器防具無しで魔法を使うと、必要以上の魔力を放出してしまい術者自身が体調異常をきたすことがある。
 聖白魔法も白魔法に含まれる。

 素質さえあれば種族・性別・年齢を問わず使えるが、召喚士はほぼ確実に白魔法を使うことができるという統計が明らかになっている。これは、召喚獣と交感するという行為が、魔力の流れを通して相手の体調を的確に察知し働きかける白魔法の特性と似ている部分があるためと言われている。しかし、未だ確かな解明には至っていない。





青魔法

 魔法の原則通り、体内の魔力を魔脈に巡らせ身体の各所にある魔脈孔から放出することとイメージすることを基本とし、威力は魔力量に依存し、性質はイメージに依存する。
 魔物特有の魔法を模倣することはとても難しいのだが、ク族が一定の魔法を使い続ける魔物には特有の味が出ることを発見し、食を通じて魔法のメカニズムを推察し模倣することを実現させた。
 黒魔法白魔法と違って魔力収束具の必要性が無い。だからこそ余波が返ったり魔力を出し過ぎる可能性が他の2つよりも高く、それと比例して危険性も高い。

 理論上ではク族以外の者でも使うことができるはずだが魔物特有の魔法のメカニズムの研究が進んでおらず、だからといってク族以外の者が食によって魔物の生態を知ることはできないため、結果、青魔法はク族の専売特許となっている。





赤魔法

 赤魔道士が使う魔法。
 赤魔法を使う者を赤魔道士と呼ぶのではなく、赤魔道士が使う魔法を赤魔法と呼ぶ。この微妙な関係は魔法にはないものである。

 赤魔法に分類される魔法は簡単な黒魔法と白魔法とされているが、とある文献には上級魔法を使えた赤魔道士の記述もあるため厳密な線引きはされていない。
 また、赤魔道士にしか使えない魔法があるという説がある。しかし、それは黒魔道士や白魔道士たちの間で廃れてしまった古代魔法が未だに赤魔道士に継承されているのだという説の方が通説となっている。
 そのため、古代魔法の研究者たちにとって赤魔道士の実態は喉から手が出るほど欲しいデータなのだが、なぜか赤魔道士には気分屋や短気な者が多いため、実現には至らず赤魔法は未だ謎に包まれている。

聖白魔法

 聖騎士が使う白魔法
 依存する条件や魔法の効果は白魔法と変わりないが、魔力を一切消費しない。しかし使える白魔法が限定される。

 使う魔法と使い手の呼称は各々の色の後に魔法・魔道士を続けるのが慣例だが、唯一、聖白魔法の使い手だけは聖騎士と呼ばれる。
 これは白魔道士との混同を避けたり聖白魔道士という響きが「白魔道士より優秀である」という誤解を招きかねないからというのもあるが、統一王国末期に活躍し大陸中に名を轟かせたシモンという完全減費型不次性魔脈症候群の騎士が聖騎士と呼ばれていた事も大きな理由だろう。


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召喚


 召喚術は召喚魔法とも呼ばれる。これは召喚獣を呼び寄せるにあたって自らの位置を示すために魔力を放出するからなのだが、だからといって魔力を放出するだけで召喚できるわけではなく、事前に召喚獣を認識して交感する必要がある。しかし普通の魔道士では事前の召喚が不可能なため、召喚できるのは召喚士一族の血を引く者だけである。
 『認識』とは召喚獣の存在を知ることを意味し、召喚士以外の者でも可能である。一方、『交感』とは召喚獣との意思の疎通を意味し、ごく稀な例外を除き、召喚士以外の者では不可能である。

 召喚獣の威力は精神状態に依存し、大した魔力を有していない者でも激しい感情を以てすれば大きな威力を見せることができる。もちろん魔力量も威力に影響を及ぼすが、意志の弱い者がどんなに魔力を費やしても大した威力は発揮できず、最悪の場合では召喚出来ない。
 また、召喚獣は宝玉に封印されることが多く、召喚獣によって封印されやすい宝玉があるという傾向が発見されている。これは宝玉に込められた力と召喚獣の持つ魔力とで同調の具合が変わるという性質があるためで、最も同調し易い宝玉にならば召喚獣は封印されやすく他の宝玉では反発がおこる。また術者が同調し易い宝玉を質量ともに沢山所持していると、宝玉が増幅器となって召喚獣の威力が増す。

 形式こそ似てはいるが、竜技とは異なる技である。






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剣技


 広義に解釈してしまうと剣の型全般を指すが、ここでの剣技とは魔力を消費した上で相手に特殊な効果を及ぼす技を指す。
 魔力消費があるので当然、それ相応に魔脈を鍛える必要がある。だが逆に言ってしまえば、魔脈の代用武具があれば大した実力のない兵でも使うことが可能になる。

 古くに剣の達人が修練の末に開発した技だったものを統一王国初期にヴィエラ州兵が取り入れて、新人兵や女兵の実力の底上げを図り、それ以降さらなる発展を遂げた。
 魔法剣や聖剣技も剣技に含まれる。





聖剣技

 聖騎士が使う剣技
 攻撃の形や効果は剣技と変わりないが、魔力を一切消費しない。しかし使える剣技が限定される。


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竜技


 ブルメシアンの中でも竜騎士と呼ばれる者たちが使うことのできる技。
 特殊な魔力を放出することによって知竜の幻影を呼び出し、その幻影が与える力のみ、もしくは知竜の力に自身の力を上乗せした形で、敵を攻撃したり味方を回復したり特殊な効果を引き出したりできる。ただし、元来気難しい気性の持ち主が多かった知竜の影響を多分に含む技なため、扱い辛い技が多い。
 槍術の型は、ルフェイン族が築いていったものが基本となっている。

 統一王国崩壊時に霧の大陸の一部の領土を貰い受けたネズミ族が、武闘派の者を揃えて領土を調べたときに知竜と出逢って契約した事が起源とされている。
 知竜と契約することによって絆を結び、戦闘などの有事に召喚して力を借りるという、細かい所は違えど召喚術と似た形式の術である。
 かつては契約した竜が死んでしまうと使えない術だったのだが、ベイオウーフという名の知竜が死の間際に後世の者とも契約ができるようにと土地に呪術をかけたため、その地を参って立願した後に修業して腕を磨き、竜に力を認められると竜技を修得できるようになった。

 知竜は善竜と悪竜に分けられ、そのどちらとも契約が可能だったため、悪竜との契約によって修得できる禁忌の竜技があるという伝承がある。


 ベイオウーフという知竜の力を借りる技。

 ベイオウーフの力が複数の小竜となって術者の周りに現れ、術者の攻撃と同時に四方から敵に攻撃を加える。変形に、術者は攻撃に加わらずに小竜だけに攻撃をさせるタイプなどもある。
 単純でありながら、術者が修練を積んで攻撃力を高めれば充分に有用であるため、新人竜騎士に修得させる慣例がある上に、熟練した竜騎士でも活用する技である。


 レーゼという知竜の力を借りる技。

 レーゼの力が小竜となって対象者の周りを螺旋を描いて昇り、回復を司る魔脈に働きかけて一時的に回復の助けとなる。
 特定された空間でレーゼの幻影が起こす風を浴びた者にのみ効果があるため、敵陣営に紛れている味方にかからなかったり味方陣営に紛れている敵にかかってしまったりと使い所を選ぶ技である。しかし、回復術に乏しい竜騎士にとっては重要性の高い効果をもたらすため、古くから多用されてきた技でもある。


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奥義


 エバーラング族が体系付けた気功術。魔法と似ているが、魔力を利用して『気』というものをコントロールする技。
 魔脈を辿って魔力が流れるように魔力の流れを誘導役として『気』をコントロールすることを基本とし、体術に乗せて身体の各所から『気』を放出して対象物に働きかける。

 潤沢かつ複雑な自然環境を生きてきたエバーラング族は、食糧獲得のために激しい海流に身を投じたり強い魔物が棲む森に踏み入らなければならず、押し並べて身体能力が高くて精神力も強い。
 奥義は、それらの能力をさらに向上させるために編み出されたものといわれ、魔脈を持たない物を利用することもできるという利点があるが、反面、身体への負担が大きいため、誰でも使えるというわけにはいかない。






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物品

ガルガン草

 成人したヒトの膝から肩ほどの丈まで育つ宿根植物。
 ガルガントの糞尿によって変質した土壌にのみ生えるため、ガルガントの生息地にしか咲かない。ガルガントと同じく過酷な環境にも耐え抜き、栄養価が高い。
 ガルガントの好物。

 数枚の幅広い線形の葉と硬く直立して伸びる茎を持ち、黄色い杯状の花を咲かせる。花は6枚の一重咲きで、通常は茎1本に対して1つの花を咲かせるが、まれに2,3個の花を付けることもある。
 球根に豊富な養分を含んでいるため食用にもできるが、切ったり潰したりすると特有の臭いを放つうえに強い苦味があるため非常食の域を出ない。丸のまま煮れば臭いは抑えられるが、苦味は消えない。

 チューリップを参考に考察しました。
 『届けられた言葉』の冒頭でイーファの樹に閉じ込められていた間、ジタンとクジャはこれを食べて飢えを凌いでいたという裏設定があります。

グリフォンハート

 1786年に、前年のアレクサンドリア国内で発生した連続殺人事件の犯人『狂人グリフォン』が牢獄内で作りだした魔石。
 作り出された当初は一つの暗紅色をした拳大の石で、その色と形は心臓を思わせたという。現在は分割されて大小様々な大きさの石となっており、最大の物でも胡桃に満たない大きさである。

 所持者の闘争心・魔力を飛躍的に引き上げるという効果があり、当初はアレクサンドリア軍の管理下で厳重に保管されていたのだが、管理にあたっていた兵の手によって闇に流された末に分割され、現在は実用性の低いレアアイテムとして愛好家の間でもてはやされている。

生黒石

 混じり気のない深い黒色をした石で、特殊な手法で磨くと綺麗な光沢を放つ。ロゼッタストーンと似て、たいへん硬くて細工の難しい石だが希少性は低く、特別な魔力なども秘めていない。
 経年に対して摩耗が少ないため長期に亘っての保存を目的とした像や碑に使われることが多いが、高い加工技術を必要とするので生黒石が使われたものは珍しい。
 規模の大きな石切り場はリンドブルム公国に集中している。

スリプル草

 寒さと乾燥に弱いが、比較的広範囲に亘って自生する植物。多年草ではあるが、定期的に寒波の訪れる地域では実質一年草である。

 草そのものや、草を擂り潰して出てくる液は睡眠薬となる。
 液は薄い白濁色で無味無臭。直接服用しても構わないが、温めて飲むか温かな飲食物に混ぜて服用するのが好ましい。しかし効能は弱く、通常は子供に対して使用され、体格に合わせて量を増やす必要がある。
 草そのものを服用する場合だが、筋と表面に生え揃っている短毛のせいで食感がよくない。筋や短毛は蒸す・茹でる・焼くなどして充分に加熱すれば柔らかくなる。

ピモピモ草

 外側の大陸に自生する植物。
 独特の甘い香りを放つピンク色の単弁花を咲かせ、花・茎・葉を擂り潰すと甘く鼻に突く匂いを出すため古くから気付け薬として用いられてきた。
 その香りを利用して香水も作られ、ドワーフ族では聖地巡礼を終えた花嫁がこの香水を付けて床へ向かうという風習がある。


 ロゼッタ王国に産する特有の石のことであるが、場合によってはロゼッタ王国国宝を示すこともある。

 たいへん硬質な細工の難しい石で、経年のわりに摩耗が少ないため長期に亘っての保存を目的とした像や碑に使われることが多い。また古くから守り石として大切にされており、精神を落ち着かせ研ぎ澄ませる効果があるパワーストーンとしても伝えられている。そのため、ロゼッタでは家長に家伝のロゼッタストーンを御守として持たせるという風習がある。
 国外ではロゼッタストーンを加工した指輪が出回っているが石材自体が貴重でロゼッタからの流出が少ないためにとても貴重であり、量産しているものは大抵、似た性質の石や金属を合成することによって作った贋物である。
 加工法を知るのはロゼッタ国民の中でも一部の石工のみで、彼らの手で加工されないと石は特有の魔力を失ってしまう。

 国宝ロゼッタストーンとは、三大古代文字によって統一王国建国に至る闘争が刻まれている巨大なロゼッタストーンのことである。

ワールドマップ

 シド1世が旅の間に書き留めていた地図を当時の地理学者たちの粋を集めて一つの地図にまとめたもの。リンドブルム公国の国宝。
 当時は空はもちろん陸海の交通手段にも乏しかったため、途轍もない努力の末の作品である。また土地を把握するというのは地の利を得ることにも通じ、測量技術が発達していなかった当時、この地図は戦争においてリンドブルムを勝利に導く存在でもあった。


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魔物

ガルガント

 区分こそ魔物であるが草食の昆虫で人や動物を襲うことはなく、それどころか移動手段として活用されることもあるほど大人しい。

 岩窟や地下道のように、暗い場所に好んで棲息する。
 眼はあるが視力は低くて発達した触覚を頼りに行動するため、他の魔物と戦闘することはまれである。また陽光にも弱く、強い光を目にすると一時的に視力を失うため、日中の地上での目撃例はほとんどない。
 角と爪と翅以外の全身に細かな産毛を生やしており、それで僅かな風でも感じられるようになっている。これは風の流れないような窟内でも通り道を探せたり、天敵の気配を察知できるようにするためである。
 基本的に虫を食す生物は天敵である。また特有の習性として「水を嫌う」というものがあるが、これは水が嫌いなわけではなく大量の水を浴びることによって産毛が機能しなくなると空間把握能力が減退し敵の気配も感じることができなくなるからであり、これは死活問題である。
 植物でさえあれば苔であろうが茨であろうが食すため、過酷な環境下でも生息できる。ただし戦闘能力は大して無いため、植物性の魔物を食すことは滅多に無い。消化器系に特殊な魔力――限りなく白魔法のポイゾナに近い――の循環があるため、毒性の物を食べても体内で解毒できる。

 生息地はその糞尿のために特殊な土壌となる。これは特有の消化液によるものであるが、その土壌にだけ生える植物がある。それがガルガン草だ。これはガルガントの好物でもある。


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その他


開拓団
語部の民

 エバーラング族の別称。主にセイクロブレス島民から呼ばれる。
 セイクロブレス島に滞在することが多かった有識者のダゲレオ・コーラルが島民に世界や歴史に関する多くの事を教えて聞かせたことが、呼称の由来と言われる。

霧の三大国

 アレクサンドリア王国・ブルメシア王国・リンドブルム公国の三国の総称。他の大陸に大国が存在しないため、ただ単に『三大国』と言っても通じる。

 霧の大陸には様々な民族が住み、様々な集落が存在する。それらの集落は統一王国崩壊後しばらくの間は独立していたが、多くの戦乱を経て近くの集落と共同体を作り上げるようになり、最終的には勢力の拮抗した3つの大国が鎬を削るようになった。それが霧の三大国である。
 民族・集落に対する三国の特徴としては、アレクサンドリア王国は民族を問わずに積極的に取り込み、ブルメシア王国は多民族を排除し、リンドブルム公国は積極的に庇護下に置くものの各々の自治を認めている。これには各々の民族性や歴史が大きく関連しているのだが、それは各項目を参照のこと(まだできていません)。

 霧の大戦が終結した後、西方開拓団が帰還してリンドブルム公国が忘れ去られた大陸を領地とすると三大国の勢力均衡は崩れたかに見えたが、新大陸が荒涼とした土地であったことと元々の開拓の目的が鉱資源の確保に絞られていたこと、リンドブルム大公が得られた資源を他二国にも亘るように交易に努めたことが幸いし、均衡は保たれたままである。
 専門家の中には「均衡が保たれたままであるというのは虚構で、リンドブルム公国が最大勢力を誇るようになった」と述べる者もいるが、その者たちも「だからこそ他国への牽制が可能となり、シド9世の善政の下、本当の意味での大戦終結が成された」と論を結んでいる。

三大国
三大古代文字

 統一王国時代以前から存在する、ルフェイン文字・ヴィエラ文字・マトーヤ文字の総称。
 それぞれは統一王国時代で主にヴブ州特別区ルフェイン・ヴィエラ州都ヴィエラ・マトーヤ自治州で使われていた。

 ルフェイン文字は表音文字のヴィエラ文字と対照的に表意文字であるため、ある程度のコツさえ掴めば意味を汲み取るのは可能になる。だが一つの文字が有する発音パターンに多様性があるため音読するのは難しいうえに、外来の固有名詞を表記する場合は音に合わせて文字を選ぶため、文献同士で表記に差異が多い。
 これを確立させたのはエバーラング族で、霧の大陸の外界にとっては最も一般的な文字であった。しかし、古代文字として大衆化された霧の大陸でその文字を使う者がルフェイン族(後のネズミ族)だったためにこの名称となった。
 未だに、エバーラング族とルフェイン族とモグラ族では日常的にルフェイン文字が使用されている。

 前述の通りヴィエラ文字は表音文字であり、ある程度のコツさえ掴めば正確な発音が可能になる。
 また、ヴィエラ文字は現在霧の大陸で一般的に使用されている大陸文字の元となった文字で、大陸文字と用法も形も変わらない文字も存在する。

 マトーヤ文字は象形文字であり、表意の要素を多少含んだ表音文字である。また文字の順番が一定されていないうえにマトーヤ文字を確立させたマトーヤ族たちの言回しが謎めいて難解なため、習得は難しい。

 ルフェイン文字は漢字、ヴィエラ文字はギリシャ文字、マトーヤ文字はヒエログリフをモデルに考えています。

聖騎士

 聖白魔法聖剣技を使う者の総称。必ずしも騎士である必要はない。
 パラディンとも言われ、希少性と能力の高さから尊崇の対象になることが多い。
 生物学的には不次性魔脈症候群の完全減費型とされている。その症候――ひいては聖騎士としての素質――が遺伝されるか否かは非常に症例が少ないため未だに分かっていない。

 聖騎士はとても珍しく、歴史的に見てもその数は非常に少ない。
 中でも有名な聖騎士は、統一王国末期はザモ州のシモンと、被霧時代末期はアレクサンドリア王国のベアトリクスである。

 実はコレ、私の勘違いからできた設定。アルティマニアに載っている、ベアトリクスに関する剣技と白魔法の習得APを消費MPの欄だと勘違いしてしまって……。どうして勘違いしたのかね。
 そこから始まった妄想を止めずに邁進したら、こんな設定ができた。『聖剣技』『聖白魔法』と名称が変わるのも不思議に思っていたことだし、まあ結果オーライってことで。

西方開拓記念日

 (1800年)10月7日。忘れ去られた大陸へ派遣されていた開拓団が調査を完遂してリンドブルムに帰還を果たした記念日。
 霧の大陸の鉄不足解消に大きく貢献した開拓団を称える意味を込めて定められた日である。

 また一方で、度重なる派遣によって多くの傷痍軍人を出してしまったことを反省し、傷痍軍人の日として定められた。
 毎年この日、リンドブルム政府が発行した証明書を提示した傷痍軍人は、有料の公共サービスおよび当日のみで終了する医療サービスを全額無料で受けることができる。

西方開拓団
晴霧の英雄

 種族・身分・性別を問わず、霧の大戦において平和のために尽力した者たちのこと。
 尽力の規模に厳密な規定は無いため名前を挙げていったら切が無いが、一般的に言えば、八英雄、リンドブルム大公シド9世、劇団タンタラス、ブルメシア王オーベロン、ブルメシア王子パック、竜騎士フラットレイ、アレクサンドリア国軍プルート隊を指す。
 
  晴霧の英雄たちを語るにあたって常に物議を醸すのは、この中にベアトリクスとベアトリクス隊を加えるか否かである。
  彼女たちはブルメシア・リンドブルム侵攻時に前線に立っていたため、両国の心証は決して良くない。しかしアレクサンドリア女王亡き後は、アレクサンドリアでのバハムート襲撃時の活躍を皮切りに平和のために尽力している。
  もともと明確な規定が無いため結論は出ず、結局は論じる側の自由となるのだが、ブルメシア国民には外す者が多くアレクサンドリア国民には加える者が多いという傾向が見られる。

血の覚醒

 ここで言われる『血』とは召喚士の血、ひいてはその血によって受け継がれる召喚の能力の事である。

 969年にベンティナス家に王座を追われて以降、長きに亘ってアレクサンドロス家の本家筋は歴史から姿を消した。それから数百年の時を経て、ベンティナス王朝時代の1325年にアレクサンドリア王国が召喚実験で事故を起こして以降、召喚士一族もまた歴史から姿を消した。
 その後、アレクサンドロス家は1401年の春に再び王権を握り歴史の表舞台に表れるが、召喚士一族の存在はわずかな文献をのぞけば1800年にエーコ・キャルオルがリンドブルム大公家の養子となるまで確認されていない。しかし、霧の大戦において三大国のうちブルメシア・リンドブルムの二国に甚大な被害をもたらしたアレクサンドリア女王ブラネは召喚獣を操っていた。この事実は、多くの研究者の興味を引いた。
 彼女はなぜ召喚獣を操ることができたのか。
 もともとアレクサンドロス家と召喚士一族は統一王国時代に婚姻を交わしたことがあり、その縁で召喚士一族は統一王国崩壊後にアレクサンドリア王国に根を下ろしていた。しかしその程度の交わりは珍しくなく、アレクサンドロス家だけでなくアレクサンドリア国民の多くに召喚士一族の血が流れている可能性は高く、アレクサンドリア国民の多くが召喚能力を有しているとも考えられる。だが現実には召喚能力を有している者は平民にも貴族にも王家にも皆無である。
 唯一の例外がブラネである。彼女の娘ガーネットは母親以上に術者として名高く、後世アレクサンドリア王家に現れた召喚能力を有した者たちは、すべてブラネの血を引いている。

 アレクサンドロス王家と召喚能力との関係を調べる研究者の中で注目を集めたのは、リンドブルム大公家へ養子に入ったエーコ・キャルオルの故郷の保全計画に際してまとめられた調査資料と、1801年にクロマ族・ドワーフ族の救援要請に応じて外側の大陸へ派遣されたリンドブルム公国ビッグス・ベルツ隊の報告書だった。
 エーコの故郷マダイン・サリは伝説とも言われた召喚士の村であり、何者かに破壊されつくして廃墟と化しながらも残されていた資料からは、アレクサンドリアを発った召喚士一族が霧の大陸を一回りした後に外側の大陸へと渡った事実が判明した。
 また、ビッグス隊の調査によって、外側の大陸には隠された宮殿が存在し、その宮殿の建築様式はヴィエラ遺跡やアレクサンドリア城と共通性があることが分かった。また、その宮殿から発見された第6代アレクサンドリア国主フローラ・ドラウト・アレクサンドロスの手記を始めとする資料によると、アレクサンドロス家の要人や友人などフローラの味方となってくれた者たちは王権を奪ったベンティナスが伸ばす凶手から逃れるため、とあるマトーヤ族の助力の下で外側の大陸へと逃れたという。発見された他の多くの資料からは、霧の大陸を出て外側の大陸へ渡ったアレクサンドロス家が新大陸で新たな体制を築こうとしていた事が覗える。
 研究者の多くは、召喚士一族が召喚獣の召喚に失敗して外側の大陸へ渡ってからアレクサンドロス家が王権を取り戻すまでの約70年間にアレクサンドロス家と召喚士一族が交わったのだと推測した。そのためにアレクサンドロス家に召喚能力の因子が受け継がれ、潜伏していた召喚術の能力がブラネの代で何らかの切欠により発現したのだろうと考えたのだ。
 専門家はこの現象を「血の覚醒」と呼んでいる。

 上記の設定は研究者たちが考え導き出した事であり、実際には、ブラネが召喚獣を呼べたのはクジャの技術力を頼ってのことで、ガーネットは召喚士一族の生き残りだったから召喚能力があっただけだ。
 けれど、ジタンやガーネットやトットなどがこういった研究者たちの結論を後押ししてもっともらしく浸透させ、ガーネットがブラネと血が繋がっていない事実を隠蔽する手助けとした。そういった裏設定があります。

八英雄
不次性魔脈症候群

 魔脈が特殊な発達――もしくは退化――を遂げ、魔力を使用する行為をしても本来あるべき生産消費活動が行われない症候の総称。不治である。
 大きく分類すると、魔力の生産量が増える『増産型』と、魔力の消費が減る『減費型』との、2タイプに分けられる。減費型の中でも一切の魔力消費が無い症例を特に『完全減費型』といい、この症候のある者のことを一般に聖騎士と呼ぶ。
 後天的な症候での遺伝は無く、先天的な症候では遺伝するとも言われているが詳しい事は解明されていない。完全減費型に関しては先天的な症例しかなく、あまりに症例が少ないため研究の第一歩すら踏み出せていないとも言われるほどである。

 この症候は魔脈の奇形の一種であるため、魔力を消費する行為に大きな影響を及ぼす。中でも完全減費型の者は白魔法剣技で使える技に制限が出ることが報告されている。
 しかし利点の多い症状であるため、特殊魔力発生装置を取り付けた武具の開発によって後天的に発症させた者――この場合、病理学的には症候群患者とされない――は多く、この症候に対する悪意の差別は無い。中でも特に完全減費型は、症例が少なく特殊魔力発生装置の開発に至っていないため尊崇の対象でもある。

星と語る者

 ジェノムの中でも特殊な『星ひいては星に生きるコミュニケーション能力を持たないモノと対話できる』とい能力を持った者のこと。
 しかし対話と言っても言語を操るわけではなく直感に近い感覚で星の意思を聴く程度である。相手の規模が大き過ぎるため、星に何かを請うたり働きかけたりすることは不可能に近いようだ。

 現在確認できている星と語る者は八英雄ジタンのみである。

 『星と語る者』という設定ができたのは、ジタンの不可思議な言動の理由について考えたからだ。
 まず、他の多くの人の言動を総合するに魔の森は凶暴な魔物が棲み付いた脱出不可能の場所で、この森では大変慎重な態度をとっていることからバクーもこの森について知る事は無いのだろう。しかしジタンは、初見の魔物を「森の主に操られた人形」と称し、森の主を一発で見抜き、森の変調を誰よりも早く察知して「森が追ってくる」と後に起こる現象を正確に表現した。これらのことから、ジタンは何らかの特殊な能力を有したものであることが窺える。しかし、その能力は予知などという明確なものではなく――仮に予知能力であったなら、ブランクが犠牲になることはなかっただろうし、そもそも霧の大戦があのように大規模化することもなかったはずだ――、もっと漠然としたジタン自身にも自覚がないほど感覚的なものであるはずだ。
 それだけでなく、ジタンとクジャの違いも気になる。ジタンが成長するまでの時間稼ぎとして造られたクジャは、ジタンとは対照的に物理攻撃ではなく絶大な魔力による攻撃を得意としていた。攻守ともに優れたクジャとチームプレーを得意とするジタンでは個人で比べてどちらが(心という概念を抜きにして)優秀かは一目瞭然のように思えるが、ガーランドは「ジタンはクジャよりも大きな力を秘めている」「ジタンはクジャを超える」と言っている。彼らの違いは「トランス能力の有無・感情の豊かさ」であるという記述もあるが、結局はクジャもトランスを果たしている――トランス能力を備えていないものを可能にしたのだから、クジャの方が遥かに優秀であるとも考えられる――し感情に乏しい者が激昂することはないだろう。だから私は「ジタンはクジャに無い能力を他にも持っていて、しかもその能力は希少性・重要性が高い」ということではないだろうかと考えた。
 それこそが星と語る能力だ。直接出向いて星を衰弱させるからには、テラの天文台に寄らずとも星の状態を把握できる環境にいる必要がある。その手段としてジタンには『星に生きる物を通して星と語る』という能力があるのではないだろうか。

魔脈

 生物全てにある生体器官のひとつ。
 魔脈はさらに、臓器に似た『魔臓腑』という魔力を生産する器官と、血管に似た『魔脈』という魔力を流す器官、汗腺に似た『魔脈孔』という魔力を放出する器官の、大きく3つに分けられる。しかし大抵の場合は『魔脈』と総称する。

 魔脈はすぐ傍にある臓器や神経と相互作用する。その性質を利用したのが魔法だ。魔臓腑を通して疲弊した臓器に活発な魔力を送りこみ体力や回復力を底上げする回復魔法や蘇生魔法、魔脈を通して神経に信号魔力を送りこみ速度感覚や正誤判断を誤らせたり五感を狂わせたりする神経魔法など、様々な系統の魔法は、一分の例を除き、同じ原理の下で使用される。
 また、魔脈は特殊な魔力を持続的に与え続けると密度や強度を高めることが出来る。その性質を利用したのが特殊魔力発生装置を取り付けた武具で、それらを装備することによって魔脈を鍛えたり発展させたりできる。しかし、人為的に魔脈を鍛えることによって他の部位の魔脈が減退するため、これらの道具を安易に使うことは必ずしも最善とは言えない。

 魔脈の奇形に不次性魔脈症候群という病気があるが、これの症例は非常に少なく、その症例の全てが先天性なものである。

リンドブルム大公シド9世直属『忘れ去られた大陸』開拓団

 通称、西方開拓団。略称として開拓団と呼ばれることもある。
 厳密には幾度かの編成を繰り返してできた第一から第四の開拓団の総称とされているが、実際に任務を完遂できたのは第四開拓団だけだったため、頭に番号が付いていない限りは第四開拓団のことを指すことが普通である。
 開拓団の編成は一貫して隊長2名に2小隊80名、学者5名となっていた。それぞれの第一第二小隊長は以下の通り。
 第一開拓団は、イーハ・バイファーヴ、ガッタ・アージュ。
 第二開拓団は、ジェラト・マクラウド、ジェフリー・デドリー。
 第三開拓団は、チャールズ・ハイマンス、レメリー・フィンタウト。
 第四開拓団は、ロナルド・フォードアレス・オクティクス

 後に、第四開拓団が調査を終えてリンドブルムに帰還した日は『西方開拓記念日』とされる。それほどに霧の大陸の鉄不足は深刻な問題となっていて、開拓団がもたらした成果は大きなものだったのだ。
 彼らの功績を称えて作製された西方開拓記念碑は、竜座の門と地竜の門そしてリンドブルム城の大会議室に置かれている。この碑は生黒石でできており、4度に亘る派遣の間に出てしまった35名の殉職者と84名の退役者の名が刻まれている。


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