役者

 コンデヤ・パタではそれぞれの集落から役者が選定され、各集落ひいてはコンデヤ・パタ全体の統治に当っている。
 役者は役者名を冠した『連』という組織に所属し、その中から選ばれた一人が頭となって連をまとめる。
 役者は心身ともに優れた者しか就けない仕事で、ドワーフにとっては役を与えられることは大変名誉なことであり、役者とはなべて尊敬の眼差しを向けられるものだ。中でも上三位の役者は神聖なものとされている。

天守
(あまもり)

 神事に関する総責任者。上三位の一。
 神に一生を捧げなければならないため、結婚や性交を認められていない。

石槌
(いしづち)

 戦士であり土木作業員。力持ちである必要があるため、9割以上が男で構成されている。
 柄頭に石をあしらった剣を持っていることと、地均しに用いた大石が役者名の由来。

犬追
(いぬおい)

 一族の安全や秩序に対して障害となるものを解決・排除する役。所謂、警察官。
 最も多い内容が魔物の撃退であるため、幾度追い払っても無駄に終わることに対する揶揄が役者名の由来。

大麦喰
(おおむぎぐらい)

 農業に関するリーダー。
 一番大きな畑を持つ者が就くことが多く、それらの者は一族で一番麦を多く食べられたということが役者名の由来。

かしまし娘
(かしましむすめ)

 一族の相談役。
 住民と役者との橋渡し役でもあり、社交的であり交渉力の高い識者である必要がある。

神担
(かみかつぎ)

 呪い師であり、口寄せ師。上三位の一。
 神に一生を捧げ、吉凶の兆しを逸早く見つけ、時には神をその身に下ろす。
 神に一生を捧げなければならないため、結婚や性交を認められていない。

空筒
(からづつ)

 農作物や武器や工芸品などの備蓄管理役。
 筒とは酒を注ぐための筒と、俵などに刺し込んで米や麦を出すための筒のこと。品質確認のために筒を常備していることが役者名の由来。

木組
(きぐみ)

 所謂、都市計画の企画者。また、樹の管理者。
 仕事の関係で『光取』と接する機会が多い。
 家などを建てるために前もって若木を材木などに組ませて矯め、空間を確保する仕事があったことが役者名の由来。

客迎
(きゃくむかえ)

 来訪する神や人を迎える者。また、新たな年を迎える際に夜通しで神に舞を捧げたり、神へ捧げる供物を準備する役でもある。
 上三位と同じく神事に深く携わる役だが、彼らと違って結婚や出産を認められている。新たな命を迎えるということで、出産時に子を取り上げるのも客迎の役目だ。

金積
(きんつみ)

 男の代表。
 武器の製造や管理の責任者。
 上三位と同じく神事に深く携わる役だが、彼らと違って結婚や子を成すことを奨励されている。

具売
(ぐうり)

 食物やそれらを乗せる器や道具の製造・管理の責任者。

実運
(じつはこび)

 一族の歴史に関する事を記録し、それらを記した書物や木簡を管理する責任者。また、祭事に使う木の実を選定し、祭壇にまで運び、儀式後に住民に分配するまでの一切を取り仕切る。
 真実を広める仕事であることが役者名の由来。
 コンデヤ・パタでは、木の実は結実するまでの樹の記憶を具現化したものと考えられているので、木の実を管理することは樹の歴史を管理することにも通じる。これもまた、役者名の由来である。

空見
(そらみ)

 所謂、気象予報士。
 外側の大陸は農作物には過酷な環境であるため、彼らの予見の力は生きる上で重要な役割を持っている。

茶聞
(ちゃきき)

 医師。
 茶はコンデヤ・パタでは防疫に役立つ重要で貴重な薬である。古来、それらの品質を確認するのは一番の腕を持った医者の役割であったことが役者名の由来。

鳥宿
(とりやどり)

 女の代表。
 上三位と同じく神事に深く携わる役だが、彼らと違って結婚や子を成すことを奨励されている。

根走
(ねばしり)

 集落の見張り役。
 敵の襲来を発見したとき、一族に知らせるために神聖なものとされている樹の根の上を走ることを許されていることが役者名の由来。

番番
(ばんつがい)

 コンデヤ・パタの門という門に配置されている門番。要所に二人一組で配されている。
 長い時間立ち続けて番をしなければならず、多大な忍耐力と集中力を必要とする役者である。

光取
(ひかりとり)

 光をどこに導くかを決める。所謂、建築家。また、祭事に使用される鏡や剣は光を増やす道具として、この役者が管理することになっている。

水研
(みずとぎ)

 水の管理人。道具として使われる水の量を見極め、水源から汲み出す役。
 ドワーフにとって水は貴重なもので、その大部分が調理用・飲用に使われ、また、無断で水に物を入れたり混入させたりするのは厳しく禁じられている。
 ドワーフがドナ大山の山間に居を移して間もない頃、大干ばつが集落を襲った。そのときの水の扱いはさらに厳格で、一族の代表者が水の監視を行っていた。それが『水研』だった。

道知
(みちしり)

 外交役。
 よく道を知っている者が就く役であることが役者名の由来。
 この場合の道とは、集落の外の道である。つまり外界の事をよく知っているということだ。

門祭
(もんまつり)

 人口動態の把握と管理をする役。また、役者の決定権を持つ。上三位の一。
 畑に合わせて新婚夫婦をどの集落に住ませるかなどを決める。
 神に一生を捧げなければならないため、結婚や性交を認められていない。

象徴

 ドワーフに伝わる伝承の中に、ボボと呼ばれる鳥が多く登場する。これが種類を指すのか固有名詞なのかは不明だが、このボボという鳥は安産・多産・子孫繁栄・豊穣の象徴であり、山間――ひいてはコンデヤ・パタ――と女性を護る存在とされている。そのため、ドワーフの中で『鳥宿り』という職名を冠する者は代々神主の補佐を務め、必ず女性が就く役目と決まっている。
 また一説には、霧の大陸南部に伝わるアウガ神話はドワーフの伝承を起源としており、神話の中に出てくるボボー鳥はボボがモデルとなっているのだという。


 コンデヤ・パタでは、木の実は結実するまでの樹の記憶を具現化したものと考えられている。
 特に果物は多くの水分を含んでいて、水源に乏しく水の管理に厳しいコンデヤ・パタにおいては貴重な存在である。





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