白花繚乱 -Postscript




 ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
 一話一話が短くて実質二話相当の長さなので短編に組み込もうかとも思ったのですが、一応四話という体裁になっているので長編の扱いをしています。
 そして(なんちゃって)長編の完結ということであとがきを付けました。


 ということで、ここからは「あとがき」です。










 今回の『白花繚乱』――百花繚乱じゃなく、白花繚乱――では、今までと違ってビビJr.たちをエーコの視点から書いた。
 ここでわかったのは、『届けられた言葉』から外れると(ジタンがいなくなると?)しんみりした雰囲気になるらしい。まあ、『白花繚乱』のテーマがテーマだから仕方ないんだけれどね。




 『白花繚乱』のテーマはメニューで色を変えてあった(タイトル内では「」で括ってあった)、「成長」「喪失」「記憶」「彼」の四つ。


 「成長」とはもちろんビビJr.たちの成長のこと。一話ではカルノしか出てこないけれど、他の五人もしっかりと成長している。
 子供の成長って、大人からしたら微笑ましく楽しみなものだけど、同じ子供からしてみれば焦りとか不安を募らせるものだと思う。特に、頼りないと思っていたビビの子供が自分の知らないうちに成長していると思うと、エーコは言い知れない焦燥感を覚えると思う。

 「喪失」は、いなくなってしまった黒魔道士たちに対して。およそ一年で止まってしまう彼らは、エーコがリンドブルムで一年を過ごしている間に288号を残してみんな止まってしまった。
 ビビJr.の六人が大人びているのは、身近で多くの死を見てきたからだ。特に長男のレオは、黒魔道士の村が次々と導き手を失っていくのを肌で感じて自分がしっかりしなければと思い、自分が導き手になれるように数多くの本を開いて知識を叩きこんでいった。そうして脱ぎ捨てて行ったビビJr.たちの幼さも、「喪失」していったものの一つだ。

 「記憶」は、エーコやレオの中にあるビビが生きていた頃の記憶のこと。つまりは過去。
 ただ、二人の間で決定的に違うのは、エーコは記憶にある風景と現実とを比べているけど、レオは記憶にあるのは過去と割り切っていること。それどころか、その記憶を糧にグングンと成長しようとしている。そう言う点では、エーコはまだ幼い。まあ、八歳児であることを考えると信じられないくらい大人なんだけどね……。

 「彼」は言わずもがな、ビビのこと。記憶を繋いでいく存在。
 ビビは過酷な運命を辿った末に短い生を終えた。でも、最後の最後で子供を授かった。そんな彼は最後まで必死で立派な「父」であろうとしたと思う。
 ビビの中で「父」っていうと、クワンが思い浮かぶんじゃないかな。食の道を究めるがために不食の手段をとったクワンは、ビビに多くのものを残した。それを実感しているビビも、子供たちに多くのことを残したいと願ったと思う。
 ただ、その必死な姿勢を感じたからこそ子供たちが早々に幼さを捨て去ってしまったと思うと、少し悲しい。



 そして、名も無い三人のJr.たち。
 黒魔道士を殺戮兵器として作り出したうえに意思を持った黒魔道士すら道具としてしか扱わず弄んだクジャや、黒魔道士たちを「チリから生まれた人形のごとき兵器」と称したザ・ソウルゲージに対してあれだけ激したビビは、消えてしまった三人も無かったことにできないだろうし、自分の子供たちにも無下にしてほしくないと思うだろう。だから、子供たちには三人の兄弟がいたと教えた。
 前々から『新生黒魔道士が一発で成功!』なんてことはないと思っていた私は、ミコトの新生黒魔道士の研究風景を構想してはいたんだけれど、どうも色々な意味で重そうだったから、そこで消えてしまった命の存在だけを書こうと思って今回こう言う形で表現した。

 まだまだ幼いエーコの葛藤とビビが子供に残していった想いが上手く表現できていたら、と思う。






 ビビが好きだと言った小さな花が、子供たちの手によって供えられ、いつか墓地を覆うように白く咲き乱れることだろう。
――白花繚乱






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2010.07.31